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路地に、人影が飛び込んできた。 その影は男の手ごとナイフを踏みつけると、地面に這っている男の顔面を蹴りぬいた。男は悲鳴もなく、石畳に伏せて動かなくなる。肩や足から力が消えて行ったのがわかった。 「ばかやろう牧野! てめぇ、離れるなって言っただろうが!」 猛獣の咆哮のような怒号が狭い路地を揺さぶった。 俺も明石も、梶さんですらその一喝に身を竦める。 現れた青年は牧野を怒鳴りつけながらも、失神した男の手からナイフをむしり取った。 ライオンの鬣のような金髪に、目が合っただけで飛びつかれそうな、鋭い目つきの男だ。襟もとにファーのついたモッズコートを着て、ダメージジーンズを履いている。背が高く体格がいい。しゃがみこんでいても威圧感がある。 しかし、真正面から怒鳴られた牧野だけは、プンと唇を尖らせて、 「女の勘が、こっちにいるって囁いたのよ!」 「そんなぼんやりしたもんの言うことじゃなくて、俺の言うこと聞けっつってんだよ! 見つけたらすぐ呼べって言っただろうがよ!」 「ごめんなさいね! 懐かしい顔がいたからおしゃべりしてたのよ! 悪い!?」 怒号すら吹き飛ばす大声がはじけ飛ぶ。 さすがにその反応に、金髪の男は目をまん丸にした。     
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