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「……ま、理由はなんでもいいけど。でも俺、この村で祭りができるなんて思わなかったからさ! 結構楽しみにしてたんだ」
「ほんとに? それならよかった。意外と屋台も増えたし、子どもたちも楽しんでくれるといいんだけど」
「ははっ、子どもと同じくらいじーさんばーさんたちも楽しんでそうだけどな」
そう言って笑う彼の視線の先には、和気藹々と話しながら祭りの準備を進める大人たちの姿があった。私の両親はもちろん、この地域に住んでいる人たちが集まって協力してくれているのだ。
農業をやっているお家がほとんどだから、みんな自分の家で獲れた野菜やお米なんかも持ち寄っている。今年も、この地域の農作物は豊作らしい。
じゃあまたな、と言って、小泉くんは法被を羽織ったおじさんたちの輪の中に入っていった。いつの間に揃えたのか、うちのお父さんは上から下まで祭り衣装に身を包んでいる。
「ひかりちゃん、ちょっといいかい? そろそろ社殿の方に供物を奉納したいんだけど」
「あ、はい! 今行きまーす!」
その声に応じて、真新しい社殿の前へ向かう。注連縄や鈴、賽銭箱も新調されて、建て直されたてんたるさんは小さくとも立派な神社になった
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