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ねがいのさきに
洗い終わったお皿を拭きながら、ぐるりと首を回す。今日はさすがに疲れたな、と息をついて時計を見上げると、もうすぐ夜中の十二時を回ろうとしていた。
こんなに遅くまで仕事をするのは久しぶりで、あのブラック企業で働いていたときのことを思い出して思わず苦笑いが漏れる。でも、あの時と今を比べたら、仕事に対する満足感や達成感は天と地ほど差があるだろう。今日もみんなに「おいしかったよ」と言ってもらえたし、今は仕事が楽しくて仕方ないのだ。
明日は定休日だし、これといって予定もないし、午前中はゆっくり休んで午後は買い出しに出かけよう。輸入食材のお店を見に行くのもいいし、久しぶりに服を買いに行くのもいいかもしれない。
「……あ、そうだ。てんたるさんに、お味噌汁持って行かないと」
ごそごそと食器棚を漁って、保温機能付きのスープジャーを取り出す。さっき作ったお味噌汁の残りをそこに注いで、固く蓋を閉めた。
定休日の前日、日曜日の夜はいつもこうして私の作った料理を神社に持って行ってお参りをすることにしているのだ。もうこんな時間だけど、今日は秋祭りもあったし、千歳にいろんな話をしたい。もちろん、返事なんて返ってこないのは百も承知だ。
急いでエプロンを脱いで、その上にパーカーを羽織る。雨が降る前に行って帰ってこようと思いながら、私は店を出た。
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