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「あっ! ちとせ、みーつけた!」
「あれ。意外と早く見つかっちゃったねぇ」
榎の大木の裏に隠れていた僕を見つけて、ひかりが大きな声を上げる。本気で隠れるつもりなんて無かったくせに、さも残念そうに「ひかりは探すのが上手だね」と言うと、彼女はさらに笑みを深めた。そして嬉しそうに僕の手を引っ張ったかと思うと、今度は千歳が鬼ね、と言ってどこかへ走って行ってしまった。
こんな風にひかりと二人きりで遊ぶようになって、もう半年が経つ。
あの日ひかりに姿を見られて、温かい味噌汁をもらってから、彼女は三日と開けずにここへやってくるようになった。
ひかりが家から持ってきた食べ物を食べたり、こうして遊びに付き合ったり、本来人間と神ではあり得ないような関係が飽きもせず続いている。でも、僕はひかりと過ごすこの時間を、何よりも楽しみにするようになっていた。
「いーち、にーい、さーん……」
ひかりの真似をして、間延びした調子で数を数える。彼女は色々な遊びを僕に教えてくれたけれど、特にこの隠れんぼがお気に入りのようで、ここへ来たときはほぼ毎回やっているほどだ。
「もういいかい?」
「もういいよー!」
しかし、所詮は子供の遊びである。ひかりは完璧に隠れているつもりだろうが、僕からは社殿の軒下にいる小さな背中が丸見えになっていた。
「ひかり、みーつけた」
「えっ!? なーんだ、もうみつかっちゃったの?」
「ふふっ、もう少し工夫しないと。こんな風に、すぐ捕まっちゃうよ?」
「きゃー!」
ごそごそと軒下から出てきたひかりを、ぎゅっと力任せに抱きしめる。ふわりとした甘い匂いと、柔らかくて小さなその体に思わず目を細めた。
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