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にんげんとかみさま
「ひかり、毎日こんな所まで来てたの? 草ぼうぼうじゃない!」
「本当だなあ。蛇なんかも出そうだし、わざわざこんな所で遊ばなくてもいいだろ」
「……だいじょうぶだもん」
そろそろひかりが来る頃だと思って社殿の外で待っていると、聞き覚えのない人間の声が聞こえてきた。それも一人ではなく、大人の男女の声がする。それに、なんだか元気のないひかりの声も。
「お前、ちゃんとひかりの行動くらい把握しておけよ。仕事が忙しいのは分かるが……」
「だって、いつも神社のお兄ちゃんと遊んでるって言うから、すぐそこの家のアキラくんが遊んでくれてると思ってたのよ。お礼にと思ってお味噌持って行ったのに知らないって言うんだもの、驚いたのはこっちよ」
「そうやって他人任せにしておくからいけないんだろ。今まで何も無かったからよかったけど……ひかりも、もうこんなところに一人で来るんじゃないぞ」
慌てて社殿の裏に隠れて聞き耳をたてる。話を聞いている限り、どうやらこの人間たちはひかりの両親らしい。母親に手を繋がれたひかりは、話も聞かずにきょろきょろと辺りを見回している。きっと、僕の姿を探しているのだろう。
「ひかり、聞いてるの? まったく、嘘ついてこんな危ない場所で遊んでたなんて!」
「……うそ、ついてないもん」
「じゃあ、その神社のお兄ちゃんって誰なのよ? 人攫いだったらどうするの!」
「っ、人さらいじゃないもん! おかあさんとおとうさんなんかに教えないっ!」
両親に叱られて、ひかりは目にいっぱい涙を溜めてそう叫んだ。小さいながらも一丁前に反抗するその姿に、両親は驚いたように目を剥く。
「ひかりっ、いつからそんなに悪い子になったの! お手伝いもしないで遊んでばっかりいて、そのうえ嘘までついて!」
「わるい子でいいもん! ひかり、もうおうちにかえらないっ! ずっとここにいる!」
「なっ……もう、口ばっかり達者になって!」
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