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「ひかり? どうして泣くの?」
「や、やだぁ……ひかり、死にたくないっ、死ぬのこわい……っ」
「え……」
思ってもみなかった反応に、僕は困惑した。僕と一緒にいることを選んでくれると信じて疑わなかったけれど、ひかりは「死にたくない」と泣き続けている。
戸惑いながら、僕は必死にひかりを説得しようとした。ひかりはよく分かっていないだけなのだと、都合よく解釈していた。
「……ひかり? 大丈夫だよ、僕が殺してあげるから。一つも痛くないんだよ」
「で、でも、やだぁ……! おとうさんと、おかあさんにも、おともだちにも、あえなくなるんでしょ……?」
「うん。でも、僕がずっと一緒にいる。……それじゃあ、駄目なの?」
何がいけないのか。何が足りないのか。
そんな疑問を全部込めてそう聞くと、ひかりはしゃくりあげながらも一生懸命僕に訴える。
「ちとせと、いっしょにいたい……けど、おとうさんおかあさんとも、おばあちゃんとも離れたくないし、ようちえんのおともだちとも、もっとあそびたいの」
そんなひかりの願いを聞いて、頭がくらくらする。なんと願いの多いことか。あの女神に人間の業の深さを説かれたばかりだというのに、僕はすっかり忘れていた。
ひかりは、人間だ。子供とはいえ欲だってあるし、未来もある。神である僕とは、存在する意味がまったく違うのだ。
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