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2次会には参加せずに、明日も仕事があるので駅へと足を向ける。
彼女へのプレゼントも持ってきたが、渡せる雰囲気でもなかったので、ブーケと一緒にコンビニのゴミ箱に捨てた。
彼女への気持ちを振り払うように、足早に駅を目指していると、
「あの、すみません!」
背後から、どこか聞き覚えのある声が聞こえる。
「だっ、大丈夫ですか?」
振り返ると男性が一人立っていた。
あー、この人は私に20回も告白した人だと思い出す。
彼の発言に対して、何が?と首をかしげる。
「だって、とても辛そうな顔をしてたので。」
ズキっと、体に鋭い痛みが走る。
「もしも、」
あー、痛い。
「俺で」
うるさい。
「よかったら」
うるさい。うるさい。
「相談に乗りま
「うるさい!!!」
自分でも驚くほど大きな声が出る。
「さっきからぐちぐちぐちぐちうるさいのよ。」
あー、止まらない。
「私の何も知らないくせに出しゃばってくんなよ。」
違う。
「昔から引っ付いてきて、」
こんなことが言いたいわけじゃない。
「ずっとあんたのこと気持ち悪いと思ってたのよ。」
彼は何も悪くない。
「私の夢は叶わなくて、」
あー、私は最低だ。
「こんな夢のままなら、」
だってこれは、
「もう死んでしまいたい。」
私の心からの叫びなのだから。
「それでも俺はあなたのことが好きだ!」
ガツンと頭を殴られたように体がよろめく。
「あなたの夢が叶わないものなら、俺があなたの夢になります。」
ここまで言っても彼は私を愛すと言った。
「だからもうそんな悲しい顔をしないで、笑っても、たとえ怒っててもいい。だけど、そんな悲しい顔はしないでください。」
あー、そうか。
彼の愛は私の愛とよく似ている。
「はぁ、もういいよ。」
「えっ、じゃあ...」
「お断りします。」
だから私は、彼のことが嫌いなんだ。
「そう、ですか。でっ、でも俺何度だって諦めません!」
「いいえ、話は最後まで聞くべきですよ。」
「えっ?」
でも、
「友達からだったら、私も折れましょう。」
「はっ、はい!喜んで!」
それと同じぐらい、彼のことを愛せるのではないかとも思ったりした。
「それで、彼とはうまくやってるの?」
彼女が私に声をかける。
「うん。あの人頼りにならないけどなんとかね。」
彼女はニマニマしながら、私の話を聞く。
「なによ、もう。」
「いや、なんでも。それよりビックリしたよ。突然カフェ開くっていうもんだから。」
「私もよ。」
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