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第一研究棟の三階にある研究室から出てきた美夕は、ロマンスグレーといった風貌の紳士、神谷教授に見送られ、頭を下げた。
「香月さん、ありがとう。
届け物ついでにこんなに手伝ってもらって」
申し訳なさそうに言った神谷に美夕はニコッと笑顔を見せた。
「いえ、勉強になりました。
こんなお手伝いなら田丸教授を通していつでもおっしゃってください。
直ぐに来ますから」
「それは助かる!
また甘えさせてもらうよ」
「はい、喜んで」
論文資料を梅郷キャンパスにいる仲間の神谷教授に何とかして今日中に届けたい、という世話になっている田丸という老齢の教授の頼みを引き受けた美夕は、ほとんど来たことのなかった梅郷キャンパスに来たのだ。
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