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だから新品ばっかで、あたしの好みとは違ってた。
「ゴメンねー。気に入らないのは買い直すから、言ってちょうだい」
「ううん、いいよ。そんなお金あたし持ってないもん」
「ご両親の遺産がけっこうありますよ。心配いりません」
本家がこれなら、分家だったうちも貧乏じゃなかっただろう。
当面お金の心配はなさそうだ。
「でも、居候だし」
「元々来る予定だったんだ。そもそも親元から離して教育するなんて、俺の両親の勝手」
稼業のため?
「って、稼業って何なの?」
政治家とか?
「んー……」
士朗お兄ちゃんが立ち上がった。
「言っても信じられないだろうな。百聞は一見に如かず。おいで」
また迷路を通り、広くて何もない部屋に連れてかれた。
四方の壁にはお札が貼られてる。
何て書いてあるのか分かんないけど……これ、陰陽師が使うお札みたいな感じだ。
「お札、仏教のじゃないよね。漫画で見た、陰陽師のっぽい」
「その通りだ」
「え? じゃ……」
「ええ、比良坂家は古くから続く陰陽師の家系なんですよ」
士朗お兄ちゃんはどっから出したのか、人形を中心に置いた。人形っていっても、かわいいぬいぐるみじゃない。怪しい日本人形。
どう見ても呪術の道具的な。
床にも謎の陣形が描かれてる。結界かな。
「それどうするの?」
「ある事件の証拠品として警察が押収したやつだ。処理を頼まれてな」
処理って、どうやって。
「こういう怨念がこもったものは、専門家が適切に処理しないとまずいからな。ほら」
どす黒いもやが立ち上る。
みるみるうちに巨大で邪悪な影になった。
素人でもヤバい怨霊だってのは分かる。
「やれやれ」
士朗お兄ちゃんはのんびりと人型の紙を出した。
まさか。
紙が武将姿の式神になり、斬りかかる。
おおお!
漫画やアニメでよく見る式神召喚ってやつね!
呪文はいらないんだー、へー。
式神はたった一体で怨霊を退治してしまった。影も形もない。
正味一分も経ってない気が。
あたしは目をキラキラさせて拍手した。
「すごーい! 士朗お兄ちゃん」
「こんなのたいしたことないぞ」
「すごいよ。その人形どうするの?」
「いわくつきアイテムってのは、きちんとクリーニングすれば使えることが多い。年代物のアンティークとして店で売る」
「売るの?!」
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