16人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただし条件がある。一般人に使わない、人前で使わない、人には秘密。危ないことはしない」
「うん、分かってる」
当たり前だ。
ちゃんと約束した。
「じゃ、この家で絶対必要な術から教えておく。屋敷全体に術がかけてあって部外者は迷うようになってるんだ。このうちの者は―――桃も反応するよう設定してある―――各部屋の入口を通過する際、行きたい場所を念じるとそこまでの通路が自動的に現れる仕組みだ」
例えばダイニングに行ってみよう、と連れてってくれる。
ダイニングっていうか広い座敷。
「食事はここでとるんだ。式神が作って運んでくれる」
「ふうん。あ、もしかして来た時並んでた使用人が式神?」
「そうです。他にもたくさんいて、あちこちで働いてますよ。基本的に人前に出る職務なら人型に変化してもらってます」
一体何人いるんだろ。単位って人でいいのかしら。
「式神もここで一緒に食ってるぜ」
「食事とるんだ」
「人間ほど毎日食べなくても平気だけどな。嗜好品ってことで食いたがる奴多いぜ」
へえ。
「選択は部屋にある洗濯物カゴに入れとけばやってくれるわ。もちろん女性のは女性式神がやってくれるの。安心していいわ」
それはすごく安心できる情報だ。
「お風呂とトイレも案内しとくわね。各部屋についてるわ。共同の大浴場もあるし」
旅館みたく、『湯』ののれんがかかってる。
「アタシも一応入れないから、パンフで説明するわね」
パンフあるんか。ますます旅館。
ていうか蒼太お兄ちゃんは女性枠なの男性枠なの?
「天然温泉で、屋内屋外合わせて八つ。サウナもあるわよ」
牛乳の自販機まであるんですけど。
「入浴可能時間は昼二時~翌朝十時まで」
もう完全にホテルじゃん。
「テレビも各部屋にあるぞ。チャンネル争いになるからなー。リビングには大型スクリーンがあって、スポーツ観戦よくやってる。ヒマな奴が集まるとこでもあるから、いつも誰かしらいるぜ」
リビングもホールくらいあるんだけど。隣にカラオケっぽいのも見えたぞ。
「図書室もありますよ。仕事関連の書籍のほか、普通の本や漫画もあります。蒼太さんや紅介さんは満喫代わりにしてますよ」
それあたしも行きたい。
「体動かしたかったら、ジムも屋内温水プールもある。外にはテニスコート・サッカー場、野球場まであるぜ」
最初のコメントを投稿しよう!