1 12才だけどワケあり6才+記憶喪失=イケメン変人義兄4人

14/15
前へ
/35ページ
次へ
 一体何を考えて完備させた。 「花園もあって、散策するだけでも楽しいわよ」 「個人の部屋を除けば、どこ行っても構わない。ただあちこちに人間とは違う形の式神がいたりするから、それだけ覚えておきなさい」 「うん」  たぶんそんなびっくりしないと思う。なんとなく。 「そういえばお兄ちゃんたち、仕事はいいの?」 「今日は休みもらってるわ。大事な妹の退院ですもの」 「……ありがと」  申し訳ないけどうれしい。  家族を亡くしたあたしを家族として扱ってくれるんだから。  夕ご飯はあたしたちだけだった。さすがにいきなりは驚かせるだろうと、式神たちとは時間分けてくれたらしい。  平気だと思うけどなぁ。  その後、自室でいるものといらないもの分け、必要な物リストアップしてたら女性式神がやってきた。和服着た穏やかな中年女性って外見で、女将さんみたい。ほんとに旅館だな。 「お嬢様、そろそろお風呂に入られますか?」  お嬢様。 「柄じゃないんで、その呼び名はちょっと……」 「では、何とお呼びすれば?」 「普通に桃でいいです」 「分かりました、桃様」  様もいらない。  でも呼び捨てするわけにはいかないって。 「桃、彼女は太陰。桃の専属世話係だ」 「えっ?! そんな、いいよ」 「慣れない環境じゃ心細いだろ。少なくとも、慣れるまではベテランについててもらったほうがいい。なにしろうちは普通とは違う。桃は体のこともあるし、何かあった時に人が傍にいたほうがいいと思うんだ」  原因不明の成長停止。 「う……」  反論できず、しぶしぶ承知した。  でも慣れないよぅ。  太陰さんは、落ち着いた、外見三十代くらいのふくよかなご婦人。いかにもベテランって雰囲気だ。常ににこやか、「おっかさん」って感じ。人をリラックスさせるオーラがハンパない。 「今、貸し切りにしてあります。どうぞごゆっくり」 「わああ、すいません。ありがとうございます」  これもいきなりは厳しいと、専用時間作ってくれたんだ。  六年ぶりに入るお風呂は格別だった。露天風呂とか景色いい。 「……ちょっと気分ほぐれてきたかも」  初めての環境、知らない人だらけはやっぱり緊張する。けっこう気張ってたんだなぁ。  言葉に甘えてゆっくり入らせてもらい、あがると置いてあったパジャマはなぜか着ぐるみタイプ。  猫。フードとしっぽまでついてる。 「…………」  これは誰の趣味だ。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加