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2 イケメン長兄(当主)はダメ大人
「あらまぁ。士朗ってば、桃ちゃんの部屋に入り込んで」
蒼太お兄ちゃんの呆れ声で目が覚めた。
……あれ、朝?
信じられず、まぶたをぱちぱちする。
泣き疲れてあのまま寝ちゃったのか。
蒼太お兄ちゃんはゴミでも見るような目で士朗お兄ちゃんを睥睨してた。
「こーのロリコン」
「ち、違うよ」
兄の名誉のために否定しておいた。
「大泣きして寝ちゃったあたしを運んでくれただけだって。たぶんあたしがしがみついて離れなかったんだと思う」
あたし本質は六歳じゃん。むずがる子供に添い寝してくれただけだって。
「分かってるわよ。でも妥当にアタシが桃ちゃんについてるってのを駄目だっつったくせに、納得いかないわぁ」
ぐにぐにとほっぺたつついてる。爪刺さってるよ。
でも起きる気配なし。
「あれ、爆睡してるね」
「こいつはいつもそうよ。朝なかなか起きなくて困ってるの」
「昨日は起きてたよ」
「桃ちゃんのためよ。あれでも緊張してたんでしょ。本当のこと知ったらショック受けるんじゃないか、うちにいてくれるだろうかって。小心者なんだからー」
そうだったんだ。落ち着いた大人の男の人だと思ってた。
「気ィ張ってたのが、糸切れたんでしょ。桃ちゃんがいて、こいつも安心なのねぇ」
「そう……なの?」
「でもムカつくわー。子猫みたいな桃ちゃん抱きしめて寝るのが楽しみだったのに。せっかくそのためにそのパジャマ買ってきたのにぃ」
「やっぱりそういう魂胆か」
あ、いいかげんつつかれまくって起きた。
「お前ならやりかねないと思って、阻止するため見張りも兼ねて俺がいたんじゃないか」
「まー、ひどーい」
「士朗お兄ちゃん、寝ぐせひどいよ」
ものすごくボサボサ。櫛でとかしてあげた。
大きな犬ブラッシングしてるみたいだ。
大人しくされるがままになってる。
「まー! アタシがやろうとすると嫌がるくせにっ」
「当たり前だろ。色んな意味でヤバい」
「そーお? ま、起きたんならいいわ。着替えて顔洗ってらっしゃい」
蒼太お兄ちゃん、お母さんみたい。
ダイニングにはすでに翠生お兄ちゃんが待ってた。
「おや、珍しい。士朗さんが起きてるとは」
「桃と一緒に朝飯食いたいからな。紅介は?」
「寝てますよ。彼も寝坊常連ですから」
「起こしに行くわ」
あたしもついてった。
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