16人が本棚に入れています
本棚に追加
紅介お兄ちゃんの部屋はスポーツ用品まみれ。壁に「筋肉万歳」だの「ノースポーツノーライフ」(英字じゃなくカタカナ)だの書いた紙が。
脳筋か。
冷静に分析した。
紅介お兄ちゃんは布団から転がり出て、あらぬところでお腹出してる。
腹巻したほうがいいんじゃない。
「紅介、起きなさーい。でないとおはようのチューしちゃうわよ」
ほっぺにぶちゅー。
悲鳴が轟いた。
チーン。
合掌。
ゲッソリやつれた紅介お兄ちゃんは朝食前にしてもまだふらついてた。
「起きないアンタが悪いのよ」
「だからってひでえ! ひどすぎる! 地獄だ!」
「普通に起こしても蹴飛ばしてくるじゃない」
「……えーと、明日からあたしが起こすね」
あんまり気の毒で、そう提案した。
紅介お兄ちゃんが「神か!」って拝んできた。
「寝ぼけて、桃相手でも蹴飛ばすといけないな。俺もついてこう」
「ああ、いいんじゃないですか。そうすれば士朗さんも起きるわけですしね」
「桃にはしねーよ。かわいい妹だぜ」
「お前の寝起きの悪さは信用できない」
全員手を合わせ、いただきます。
お膳の上には立派な朝食。スタンダードな和食で食べやすい。
今朝は室内に式神たちもいた。太陰さんとかそっちで食べてる。
人間とは違う姿かたちのもいたけど、気にならなかった。
「桃さん、平気そうですね」
「うん、特に違和感ないなぁ。あたしも陰陽師の素質あったんでしょ、前から人外のものが見えてたのかもね」
物心つく頃から普通に見えてれば、これくらいじゃ驚かないんだろう。
「そうか。なら、本格的に術教えても大丈夫そうだな」
「桃ちゃん、がんばってね。アタシたちは今日は仕事―」
あ、そっか。お兄ちゃんたちみんな働いてるよね。
三人の兄は時間になると出かけて行った。
残ったのは一番上の兄。
「あれ、士朗お兄ちゃんは?」
「俺は自営業。好きな時だけ店開けてんだ」
ん?
なんかダメっぽい発言が。
「……なんで?」
「働きたくないから」
キリッとしてろくでもない発言された。
「俺、正直働きたくないんだよ。のんべんだらりと暮らしたい」
ダメ大人じゃないかー!
いや、金持ちすぎて働かなくても食ってけるってこと?
「金持ちだから遊んで暮らしたいってわけ?」
最初のコメントを投稿しよう!