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上履きに履き替え、校長室へ向かった。
校長は紳士って言葉がぴったりの、穏やかな中年男性だった。
「事情は聞いています。改めて学校生活楽しんでくださいね」
「あ、ありがとうございます……」
絢子ちゃんが注釈入れた。
「あんまかしこまらなくていいわよ。これ、あたしの部下の一人だから」
へ?
ちょっと考えて、理解した。
「あ、式神か」
綺子ちゃんは首を振った。
「違う。あたしは式神持ってないの」
「陰陽師なのに」
「主従関係じゃなく、雇用契約結んでるのよ」
どゆこと?
「社長と社員みたいなもんね。働いてもらうかわりに給料払う」
お給料払ってるんだ。現代的。
「現代の人間社会に即して?」
「そうね。あたしは行き場をなくした人ならざるものを保護し、暮らしていけるように援助する仕事してるから」
「彼女は妖狐警察の長官なんだよ」
士朗お兄ちゃんが端的にまとめた。
け、警察?!
警察ってあの警察ですか。JSがやっていい職業だっけ。
ああ、妖だった。
「妖にも警察あるんだね。あ、だからあたしに一緒にいろって」
「そういうこと。それまでなかった警察組織をあたしが作り、取り締まりや調停役やってるわ。就職や住居のあっせんもしてる」
すごい。
「へえ、陰陽師にも色々いるんだね」
「あたしは陰陽師であり妖であり、元人間だもの」
「うんうん、共存って大事だよ」
深くうなずく。
「この学校は人ならざるものの子も人と同じように仲良くやっていく、共に過ごす特別校なんですよ」
それであたしみたいなワケありもすんなり受け入れてくれたってわけね。
翠生お兄ちゃんを先頭に、綺子ちゃん、あたしの順番で教室へ向かった。
士朗お兄ちゃんは応接室で待ってることになった。
さっそくソファーでごろ寝始めようとしてて、やっぱりこの兄はどうしようもないんじゃないかとものすごく心配になった。
☆
転入したクラスは一年一組だった。あたし入れて28人。
このうち9人が人間じゃないそうだ。
誰がそうか、見た目じゃ分かりにくい。みんな化けるの上手いな。なんとなく「あれ……?」ってカンで分かる程度だ。
「比良坂桃です。よろしくお願いします」
まず普通に自己紹介。
翠生お兄ちゃんと名字が同じなのは、「両親が亡くなって遠縁に引き取られることになった。それがたまたま親戚だった」と説明する。事故で記憶があやふやだとも。
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