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5 四兄弟の秘密会議
「で? 士朗、桃ちゃんの様子はどうなのよ」
夜更けに四兄弟が集まっていた。庭のあずまやでダラダラ酒飲んでた士朗のとこに押しかけたともいう。
「どうって?」
寝巻の浴衣を気崩した士朗は顔も上げずに聞き返した。
「体の方も、心の面も。今んとこ大丈夫?」
「たぶんな。両親の死と自己については、あえて考えないようにしてるっぽい」
「本当のことは思い出してませんか」
「当分は平気だろ」
空になったグラスになみなみを注ぐ。
「僕ら、酒なんか効かない体とはいえ、よく飲みますね」
翠生があきれかえる。
「しっかし、兄妹って嘘はすーぐバレちまったな。意外と聡い」
「『彼女』の力の影響でしょう。中身も六歳で止まってるはずなのに、思考力も知識も大人と同レベルじゃないですか」
「士朗ってば、よくごまかしたわよね」
「嘘をつくときは真実を織り交ぜること。100%嘘だとバレる。詐欺師の常とう手段だそうだ」
「アンタ、無駄に才能を浪費するんじゃないわよ」
蒼太が半眼になる。士朗は肩をすくめた。
「俺は何もやりたくないんだよなぁ、ほんとは。ただひっそりのんびり平凡に暮らしたいだけなのに。……『彼』の力の影響もあるだろうが」
ふう、と息を吐いてグラスを置く。
「僕ら全員無理でしょう。この力を持っていてはね」
「悪いな」
三人は首を振った。
「士朗兄貴のせいじゃねーよ。兄貴も被害者だろ」
「そうよ。そして今アタシたちがすべきことは、桃ちゃんを育てること。……陰陽師の修行はどうなの」
「早い。さすが素質あると選ばれただけはあるな。まずこれで知識つけさせて、力のコントロールを覚えさせる。いきなり『彼女』の力使ったら、どうなるか分からないからな」
「引き金になって記憶戻るかもしれねーな。したら、ショックでかすぎておかしくなるんじゃね? 中身は結局六歳の子供なんだ。今だって、自己防衛でわざと考えないようにしてるもんなー」
翠生は改めて士朗に目を向けた。
「そういえば、桃さん名義の信託財産を設置したそうですね。桃さんのご両親の遺産関連の書類を取り寄せたらついてきましたよ」
「は? アンタわざわざ作ったの」
「何で俺が作ったと思うんだ?」
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