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日本トップレベルの神様たちがそんな議題で論争してたの?!
「…………」
しばらくあれこれ考えた結果、結論は。
「平和だね」
綺子ちゃんと同じものだった。
うん、いいんじゃない? そんなのでケンカできるほど暇で仲がいいってことさ。
平和が一番。それで片付けた綺子ちゃんの気持ちがよく分かった。
「神様たちの仲裁できるって、士朗お兄ちゃん、実はけっこうすごい人なの?」
「ていうか、俺は昔、イザナキノミコトを強制憑依させられたことがあってな。その副作用で彼の力が少し体内に残っちまったんだよ」
ん?! またえらいネタバレがキタ。
もうツッコミが追いつかないんですけど?!
「ど、どういうこと?!」
「比良坂家と御影家はライバルでな。お互い京都の鬼門と裏鬼門を守る家なんだ。古くからずっとそうで……対抗心燃やしててさ」
「うちの先代が来るべき予言の災いを防ぐため、あたしに九尾の妖狐の力を注入したのは言ったでしょ。そしたらライバル視してる比良坂家としては、どうすると思う?」
「あ……自分とこも人為的に強力な戦力作ろうとした?」
正解、と二人ともうなずく。
「妖の力を憑かせたんじゃ二番煎じになるんで、他の力を使おうとした。したら、思い浮かぶのは日本古来からいる神々だ。てわけでその中でも最も強いイザナキノミコトを召喚したわけだ」
「陰陽師だよね? 神主や巫女じゃないんだから、上手くいくの?」
「その通り。素人が付け焼刃で強硬したもんだから、早い話が失敗したのさ。上手くいかず、半端に影響だけが残った。ま、罰が当たって先代たちは連行されてったよ」
「どこに?」
「さあ? 黄泉か、どっか刑場か。興味もないし、どうでもいいな」
先代たち……ってことは、士朗お兄ちゃんの親たちのはず。実の親なのに、こんなにもそっけない。
逆に言うと、それほどひどい仕打ちを受けたってことだ。
神召喚の失敗。微妙に残ってしまった力の影響で、体にも異変が起きたはず。
正しいやり方をしても、巫女が耐えきれず死ぬ例はいくらでもある。まして失敗したら。
あたしは士朗お兄ちゃんの服をつかんだ。
「大丈夫? 痛くなかった?」
士朗お兄ちゃんはちょっと驚いたようにあたしを見下ろし、複雑そうな顔で頭をなでてきた。
「大丈夫だよ。ずいぶん昔の話だしな。……そんなわけで、俺はもう人間じゃないんだ。ちなみに蒼太たちもな」
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