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「えっ」
「あいつらも同時に依り代にされた。欲を出したもんだよ、一度に複数の神を召喚しようだなんて。式神ならできるから、いけると思ったんだろうな」
「みんなにはどの神様が?」
「それはあいつら自身に聞け。知られたくないかもしれないから、俺が言うわけにはいかない。半端に神の力の一部を持ってるなんて、立場が微妙でさ。本物みたいに何でもできるわけじゃないし、かといって人間でもない。立ち位置困るよ」
綺子ちゃんが理解できるらしく、うんうんとうなずいてる。
「ただまぁ、俺の場合、それを重宝がられることもある。さっきみたいな、神々のトラブルが起きた時だ。イザナキノミコト本人は引退して一切不干渉を貫いてるし、実際に出てきてもらうほどでもない案件なら俺が呼び出されるんだよ。神ではなく人間でもない、イザナキノミコトの力を持ってるが本人じゃない、まったく無関係な第三者ってことでな」
「あ、なるほど……」
確かに仲裁役としてはうってつけだ。綺子ちゃんも同じことが言える。
そりゃこの二人がそろってれば、剣を鞘に納めようって気になるよね。
「イザナキノミコトは今、人外のサッカー日本代表監督やってるくらいで、基本引退生活満喫してる」
「ちょっと待って?! 人外のサッカー日本代表って何!」
「ほら、世界の神やら何やらの中には好戦的な奴もいるだろ。けど戦争されると困るんで、スポーツで勝負しようって平和的解決をみたんだよ。サッカーと野球は通年やってる。四年に一回オリンピックもやってるぞ」
そ、そっか……うん、スポーツで勝負なら……。
「でもどうせ普通のやり方じゃないんでしょ」
「妨害行為やケガさせるのは禁止とか、ちゃんとルールあるぞ。危険だから力の強さでランク分けしてあって、戦えるのは同じランク内のみ。ほら、ボクシングでも体重別に分けてあるだろ。同じようなもんだよ」
全然違うと思う。
「今度試合見に行ってみるか? チームに強力なメンバーが入ったってスサノオノミコトが言ってた。しばらく会ってなかった友達と再会して、スカウトしたんだと」
「見たいかと言われたら、正直見てみたい。映画かアニメのCG?ってくらいすごそうだね」
さて、と士朗お兄ちゃんは紙袋を持ってくれた。
「じゃあ帰るか。とりあえず片付いたことだしな」
「助かったわ、比良坂士朗。謝礼は観戦チケットってことでいいかしら?」
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