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「みおあさ先生、お願いします」
「今行きます」
みおあさあきらは、医者である。
真面目で優秀、にこやかで物腰も柔らかく、患者からも看護士からも人気があった。
手術の腕も良く、評判が良いみおあさには、彼女がいるのではないかという噂があった。
「山口さん、こっちお願いします」
「はい、みおあさ先生」
その噂の相手が、この山口愛だ。
可愛らしい容姿はもちろん男性陣から注目の的なのだが、同じ看護士から言わせると、性格は最悪らしい。
だが、医者の前ではそんな姿を見せるはずもなく、愛は狙いを定めていたみおあさの周りを付きまとっていた。
みおあさは他の人と同じように愛に接しているため、彼が愛をどう思っているかは定かではない。
「お昼行ってきます」
「私もー!」
こんな具合に、いつもみおあさの後を付いて回っているが、みおあさも嫌そうな表情を見せたことがないため、両想いなのではと言われている。
一方で愛が何度か食事誘っているようだが、みおあさは一度も行ったことはなく、それでも諦めずに誘い続けているそうだから、くっつかないだろうという意見もあった。
「みおあさ先生!今日こそご飯に行きましょう!ね!」
「いいですよ」
「え!本当ですか!」
「ええ、構いませんよ。毎回誘っていただいているのに、断り続けるのも申し訳ありませんからね」
「やったー!!!じゃあじゃあ、約束ですよ!?絶対ですよ!?」
誰もいない時に誘ったのが良かったのか、やっと気持ちが通じたと愛は喜ぶ。
そして食事に行き、一通り食べ終えると、みおあさが愛に尋ねる。
「山口さんの昔の彼氏のこと、聞きたいな」
「ど、どうしてですか?」
「山口さんのこと気になるから」
「!!!」
これはもう脈ありかと、愛は迷った末に答えることにした。
「学生時代に同じサークルの人と付き合ってたんですよ。まあまあイケメンでしたけど、正直ちょっと子供っぽい人で」
「へえ、それで?」
「その人本当にヤバい人で、同じサークルにいた後輩の子が気に入らないからって、酒で酔わせて、レイプ犯にしてやろうってなったんですよ。しかも、相手は私ですよ?だから破り易い服着てこいとか言われて」
「それは、酷い男ですね」
「ですよね!?まあ、結局それは何事もなく終わったんですけど」
「それは何よりですね」
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