第六話【トゲだらけの子安貝】

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 「きゃー!!!ふるやくーーん!!はるとしくーーーん!!!!こっち見てーー!!」  潮室かえでは、新人俳優のふるやはるとしの大ファンである。  だからこうして、今日も彼が出演するというドラマの現場に来ている。  声援が聞こえてくると、ふるやはこちらを見てにこやかに笑い、さらには手も振ってくれるというファンサービス。  「ふるやくんってなんであんなに素敵なんだろう!!彼女いないよね!?」  「はるとしくん格好良いーー!!もっとこっち見てー!!サインお願い!!」  撮影が終われば、ふるやは女性たちのもとへと向かい、時間が許す限り1人1人にサインをし、写真を撮り、握手もする。  かえでも必死になってふるやにアピールすると、ふるやがこちらを見てニコリと笑ったような気がした。  その場に居た誰しもが、自分を見て微笑んだのだと言っていたが、それはかえでも同じことだった。  「きゃー!ふるやくんと目が合っちゃった!嬉しい!!」  ルンルン気分でコンビニに向かい買い物を終えて出たところで、フードを被った男とぶつかってしまった。  「すみません!」  そう言って謝り顔をあげると、そこにいたのはあの大好きな大好きな、ふるやはるとしだったのだ。  かえでは驚きのあまり、口をパクパクさせてしまった。  「ごめんね、大丈夫?」  「だ、大丈夫、です」  ふるやはかえでにお詫びがしたいと、飲み物を買って渡した。  「あの!は、俳優のふるやはるとしさんですよね!?私、大ファンなんです!あの、良かったら一緒に写真撮ってもらっても良いですか!?」  「ええ、もちろん。いつも応援してくれてありがとう」  天にも昇る気持で写メを撮り、公園のベンチで隣に座って飲み物を飲む。  それからというもの、隠れてふるやとかえでは頻繁に会うようになった。  まるで恋人のようでかえでは嬉しかった。  ふるやの車で落ち合う事が多くなると、本当に彼女になったのかと思ってしまうほど。  「はるとしって呼んだら、どんな顔するかなー?」  フフフ、と笑っていると、公衆電話から電話がかかってくる。
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