第六話【トゲだらけの子安貝】

3/4
前へ
/30ページ
次へ
 ふるやからだと分かり電話に出ると、今日の夜会おうという内容のものだった。  ふるやの車が修理に出ているため、かえでが車を出すことにした。  嬉しくてお洒落をしていこうと、かえではお気に入りのワンピースを着て、メイクもばっちりして出かける準備をする。  「お待たせしました」  「自分から会おうって言っておいて、車を出させてしまってすみません」  「いいんですよ。気にしないでください」  ふるやと待ち合わせをしていた場所に迎えに行くと、適当な場所に車を停める。  時折車が通るが、それほど多くは無い。  「かえでちゃん、この前面白い画像見せてくれたけど、あれっていつ頃のものなの?」  「え?ああ、あれですか?確か、去年か一昨年のですね。その前にも同じような現場に遭遇して、その時も撮ったんですよ。見ます?」  そう言うと、かえでは得意気にスマホの画像を見せる。  「この前見せた事故の時は友達も一緒だったんですけど、この時は1人だったんですよ。すごい事故だなーとは思ったんですけど、誰かが電話かけてたし、大丈夫かと思って」  「この前のも見ていい?」  「ええ、どうぞ。ふるやさんって、こういう画像見るんですか?」  「そういうわけじゃないよ。ただ、俳優としてこういうことも知っておいた方が良いかと思ってね」  「なるほど!!さすがですね!!」  じっとその画像を見ていると、かえでがまた口を開く。  「その友達看護士なんですけど、今の病院のお医者さんで良い人がいるって!その、結婚とかも考えてるって言ってました」  「へえ、そうなんですか」  「あの、私達って、その・・・つ、付き合ってるんですか?ね?」  もぞもぞしながらふるやに尋ねてみると、かえでのスマホを綺麗に拭いてから持ち主に返した。  それからかえでの方にぐいっと近づくと、がたん、と運転席を倒す。  「ふ、ふるやさん・・・」  顔を近づけてくるふるやに、かえでは頭がパンクしそうだった。  徐々にふるやの顔が迫ってきて、かえでは思わずきゅっと目を瞑り、唇に温かい感触が訪れるのを待つ。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加