第二話【疑いは手を添えて】

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 優介は、必死に抵抗を試みる。  だが、どうにも身体から力が抜けているように上手く動かない。  気のせいだろうか、フラフラしてきた。  「辛い?死ぬのは嫌?」  「んんん!!!」  「あなたに見捨てられた人は、きっと沢山いるんでしょうね。その人たちのためにも、あなたはここで死ぬ方が世の為ね」  肌に何か冷たいものが当てられると、聞こえてくる音の回数が増える。  「もっと傷口大きくしておいたから。これでもっと早く死ねる。もう半分も溜まっちゃった。愉しみね」  「んんんんんんん!!」  それからしばらくすると、優介は動かなくなってしまった。  目隠しを取り、脈を確認し、ただ椅子に座っているだけの状態にする。  「こういうの、なんていうんだっけ。ま、いいか。水垂らしただけで死ぬなんて、無様ね」  私には、結婚を考えていた彼がいた。  その彼が、ある日死んでしまった。  理由なんて、分からない。  彼の学生時代の写真に写っていた、所属していたサークルの人たち。  その中の1人に出会って、口説かれた。  今はもういない彼のために、私はその人と結婚して、この日を待っていた。  素敵な記念日になったでしょ?  これでもう、貴方に傷付けられる人はいないんだから、それこそ何よりの免罪符、でしょ?  『続いてのニュースです。昨日、男性の遺体が発見されました。帰宅した妻が見つけたもので、男性の身体には外傷もなく、ショック死と思われております』
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