①上の村

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 私は、あまりの大きさに圧倒された。 洞窟の天井に今にも届きそうなほど、およそ10mはあろうかと思われる巨像が私達の前にそびえたっていたのだ。それは、何対ものしなやかな脚によって支えられた二枚貝の貝殻だった。半ば開いたその貝殻からは、先端にポリプ状の付属肢のついた、いくつかの節を持つ円筒状のものが何本か伸び出ていた。そして貝殻の内部の闇の中には、その知性を欠く様は身の毛もよだつほどの、深く窪んだ眼を持ち、輝く黒髪に覆われた、口の無い顔が見えたように思われた。  なんともおぞましい姿だ。これほどの物を造るとは、新興宗教も侮れない。     
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