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「すみません。突然、失礼なお願いをして。」
振り向くと、青ざめた顔で真理子は震えていた。
恥をかかされた怒りで震えている様子ではなさそうだ。
帰る道すがら、私達は一言の言葉も交わすことはなかった。
私は、真理子の家に着くと、すぐさま携帯電話をとりだした。
この村の連中が、ここから出さないということであれば、自分で帰るしかない。
どうやら、この村にはバス停がない。どんなにお金がかかっても良いから早くこの村を出たい。
その思いで、私は携帯のロックを解いて、タクシーを呼ぼうと思った。
圏外。
予想しなかったとは言えないが、さすがにこの現実には絶望した。
「こうなったら、君に責任を取ってもらう。明日の朝早く、まだここの連中が寝静まっている時に、私はこの村を出る。車の鍵を渡してもらおうか。」
私は、真理子に迫った。真理子は言いにくそうに、口を開く。
「無駄だと思います。先生だけでは、この村を出て行くことは出来ません。」
「じゃあ、君が案内してくれ。」
「私は、明日には生贄になるので、行けません。」
私は呆れた。
「まだそんな非現実的なことを言っているのか?生贄だなんて、そんなことがこの国で許されるわけないだろう。」
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