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昆虫のような羽根を持ち、それは太古よりこの地球にはびこっている、嫌われ者の姿をしていた。
何頭ものそれが、わしゃわしゃと私達に迫り、間合いを詰めてきた。
「ひぃぃぃぃっ!」
私は、あまりのおぞましさに後ずさり、悲鳴をあげた。
私の手を掠めたのは、どうやら、この異形の物の、鋭い顎のようだ。
ゴキブリのようでもあり、顎の様子は、ハンミョウのようでもある。
信じられないことだが、今は逃げるしかない。
私は、真理子の手を引くと、一目散に、反対側の縁側から庭へと飛び出した。
車に真理子を引っ張り込み、鍵をかけるとエンジンをかける。
なかなかエンジンがかからない。
「くそっ!」
私が、ハンドルを叩くと、追い着いて来た異形が窓に張り付き、鋭い顎で窓を叩き割ろうとしている。
「なんなんだ!こいつら!」
「シャンの僕(しもべ)たちです。彼らは従順な僕。神の力には逆らえません。」
諦めたように真理子がうなだれる。ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返し、泣くばかり。
「諦めるのはまだ早い!」
私は必死にエンジンをかける。
ピシッ!
窓ガラスにヒビが入り、あっという間に硝子が飛び散ってしまった。
異形の刺々しい足が私の腕に食い込んだ。
そのとたん、ブルルンとエンジンがかかった。
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