逢う魔時

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「ねえ、藤虎、折角の休みだから、まだ昼間だけどちょっと飲もう?軽めの赤でも開けない?」 「そういえば、冷蔵庫にロワールの赤のスパークリングワインが冷やしてあったよね?それ、試してみよっか。」 「いいねえ。合いそう」嬉しそうに笑った力弥が、へにょへにょと頼りない足取りでキッチンへ向かう。 「ちょ、力弥さん!俺が持ってくるから!」藤虎がさっと椅子を引いて力弥を坐らせると、ワインやグラスをさっさと用意した。紫がかった濃い赤色のワインの上に、ピンクの泡がしゅわしゅわと広がる。 「あ、ベリー系の香りが結構強いね。味は割とドライだし、うん、豚肉にも合ってる。おいしい、おいしい。」 「これは、女子受けしそうだなー。あ、ホントだ。思ったほど甘くなくてよかった。」そんな感想を口にしながら、生き生きとした表情を見せる力弥に藤虎は見惚れた。ベッドの上でしどけなく身もだえる力弥も最高だが、やっぱりこうして、おいしい、おいしいと食事をしている力弥が一番愛らしい。 「それにしても藤虎、料理がうまくなったよね。」 「店でやってるのを見よう見まねでやってみただけだよ。ブーランジェは調理の方はしないからね。あとは、力弥さんの真似っこ。」 「そうなの?」 「うん。ほら、力弥さん、肉を焼く時に油を上からかけてるでしょ。」 「ああ、アロゼ?」
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