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「パリで料理学校に通っていた頃の、先輩?みたいな?」
「へえ。アメリカ人の男以外にも、親しかった人がいたんだ?」
「親しい、ってわけでもなくて。少し前に偶然、街で出会って。懐かしいからご飯食べに行こう、とは言われてたんだけど。なかなかスケジュールが合わないし、そのうちこんなことになったから出かけるのが難しい、って伝えたら、じゃあ近くでお茶でも、みたいな感じで…。」
「ふうん。で、俺と暮らしてること、話したんだ。」
「いや、えっと、体調を崩して友人の家にお世話になっている、って伝えただけ。」
「そいつ、何て名前?」
「黒沢、繁さん。」
「ふーん。もうちょっと、いろいろ、教えてよ。そいつのこと。」
藤虎には確信めいたものがあった。そいつが、あのメモに絡んでいる。力弥が「友人」の家にいることを知っている人物。最近になって現れ、力弥に執着している男。藤虎は力弥の乳首をぎゅっと抓った。
「いっ…藤虎。あ、あの、黒沢さんのことは正直、あんまり、知らない…。名刺、持ってる、から…あっ、あっ…。だ、めっ…。」
藤虎が胸の飾りを爪でいつもより少し強く?きながら、耳の後ろをきつく吸い上げた。一片の真っ赤な花びらが、密やかに散る。
ああ…これ、また、抱きつぶされるやつだ…。力弥は軽い眩暈を覚えながらも、執拗な愛撫に飲み込まれていった。
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