246人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
そう思って流し目をくれると、その先には絶対零度の冷やかさで目を坐らせた力弥がいた。
「…藤虎、僕はこういう冗談、嫌いだよ。」
「え…あ、えっと…スミマセン。」
「なんか今日一日、おかしかったよね。何だかべたべたしてきて。」
力弥はふん、とため息をつくと、一転、少し困ったような、労わるような笑みを浮かべて言った。
「女の子と遊びたい時は、遠慮せずにそう言ってよ。僕も藤虎に無理強いしてまで、食べ歩きに行こうとは思ってないからさ。」
いつもより早いタイミングで帰り支度をした力弥が、玄関先で藤虎の胸を拳で軽く叩いた。
「それじゃあね。デートがうまくいったら、教えてよ!」
何も言い返せぬまま、力弥を見送った藤虎はガチャンと閉まった玄関ドアの前にへたり込み、両手で顔を覆う。
(うわー、やらかした!あんなに怒った力弥さんの顔、初めて見た…でも、最後はフォローしてくれるなんて、やっぱり優し過ぎる…。好き。大好き。)
藤虎はのろのろと起き上がると、そのままいつものように風呂場へとなだれ込むのだった。
最初のコメントを投稿しよう!