零れる想い

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そうして、二人が出会ってから二年の時が過ぎた。藤虎は時折、合コンで適当に彼女を作ったと力弥に報告しては、次に力弥と会う時には「あー、もう別れちゃった」と言うことを何度も繰り返したが、力弥はスパンの短さにあきれることはあっても、薄い反応は相変わらずだ。 「力弥さんは、彼女とか作らないの?」テレビに出て話題になったメロンパンを頬張りながら、藤虎が聞く。 「出会いがないもん。あ、この卵焼きサンド、すっごいふわふわ」どうでも良さそうに力弥が答える。 「だから、合コンに一緒に行こうって前から言ってるんじゃない。」 「うーん。彼女が欲しい、っていう願望がないからなあ。好きになったら付き合いたい、とは思うけど。でも、今は絵とか観て自分の感性を養いたいし、ゆっくりできる時は本を読みたい。外で遊ぶのは、藤虎が付き合ってくれるからそれで十分。」 そう言ってにこりと笑う力弥を見ると、出会った頃と変わらず藤虎の胸は小躍りする。こうやって遊んでいるのは自分だけ。力弥を独占している。正直に言えば、合コンになんか行かせる気もない。連れていけば、女たちが力弥に群れを成すのが分かり切っているからだ。そんなところを見れば自分は嫉妬に駆られて、結局その女たちを食い散らかすことになるのだろう。断られると分かっているから、気楽に誘えるのだ。
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