零れる想い

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「おう。仲イイよ!それでさ…、リキヤってそっちにいた頃、付き合ってる人っていた?」 「ん?」ジャンとエミールがしばらく顔を見合わせたまま固まる。 「おい、フジ」ジャンが向き直った。「お前、何でそんなこと聞くんだ?」 「えーっと。好奇心?」 「なら、リッキーに直接聞きなよ」とエミールがもっともなことを言う。 「それがさ、俺たち二年も前から友達で、一緒に遊びに行ったりしてるんだけど、昔の話を一切教えてくれないんだよ。頼むよ、フランスにいた頃のことだけでも知りたいんだ。…誰かと付き合ってた?」藤虎は眉尻を下げ、心底困った、という顔で二人に追いすがる。 「フジ。お前、何でそんなこと知りたいんだよ。ただの好奇心じゃねえだろ。本当のことを言え。」 「うーー」藤虎は両手で顔を覆って何かぼそぼそ言うと、突然、両頬をパン、パンと叩いて気合を入れた。その様子をジャンとエミールはじっと眺めている。 「俺さ、力弥さんが好きなんだ。」 「へー。ジャンと二人で、どっちが早く女を落とせるか、ってバーで競争してたフジが?」エミールがニヤニヤと笑う。 「っ!あれは単なるお遊びだろ。」 「お持ち帰りもしてたよね?」エミールが冷めた顔で肩をすくめる。
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