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五年ぶりに会う親友は、入国審査を終えて通路を出てきた力弥を見つけると、スマホを握った手を軽く上げながらホッとしたような顔を見せた。
「おっす……疲れたか?」
「ううん、平気。お迎え、ありがとう。」
「…ああ。とりあえず、俺んちに帰ってその荷物置いてくか。それからメシでもいい?」
「うん、任せる。」
微妙な距離感。高校生の頃のように肩を抱き合ったり髪の毛をくしゃくしゃとかき回したりするほどのスキンシップを期待しているわけではなかったが、治樹のそっけない口調には寂しさを感じずにはいられなかった。元気にしてた?仕事はどう?高校時代の友達とは、連絡とってる?いろいろなことが聞きたいのに、言葉がのどにこびりついて出てこない。
空港から二人で乗り込んだリムジンバスの車内は思いのほか静かで、互いの口はますます重くなった。
(治樹、やっぱり怒ってるんだ。それもそうだよ。親友だと思ってたヤツが、自分の父親とできてた、とか、気持ち悪いよね。しかも芳樹さんは、僕たちが付き合い始めた頃、まだ離婚してなかった。治樹は、お母さんにはまだ小さかった頃からずっと会っていないって言ってたけど、世の中的に言えば不倫だ。)
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