逢う魔時

3/68
248人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
「お前とうちの親父とのことは、知ってんの?」 「知ってる。」 「あいつまさか、息子までお前と、みたいなエロ小説じみたこと考えてるわけ?」 「僕も散々、治樹は友達だって言ったよ。なんか、巧と隆平まで地雷だったみたいで…正直、ここまでヤキモチ焼きだとは思ってなかった…。」 「アイサレテマスネー。」 二人ともふっ、と苦笑を漏らした。 この峠道を越えれば、治樹と力弥の故郷はすぐそこだ。今日は昼から、力弥の中高時代の同級生である追川隆平と渡辺巧の結婚、実際には養子縁組を祝う内々の食事会に治樹と共に招待され、久しぶりに故郷を訪れた。二人は高校一年生の頃から付き合い始め、交際十周年を迎えた今年、晴れて法的に家族になることを選んだ。交際当初から追川家も渡辺家も特段、二人の関係に反対する様子はなく、むしろ巧への告白をためらっていた隆平に、豪放磊落な父親は「玉砕しようが、付き合ってからいつか別れようが、俺たち家族はいつでもお前の味方なんだから、先々のことまで悩まねーでバシンとアタック決めてこい」と後押ししたらしい。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!