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「どうされましたか?」
「君のお父さんから、数か月前に連絡があった。」
「え?渡辺さんに?」
「ああ。遺産相続の時に、彼に会った、という話は覚えているかな?」
「はい。渡仏前に、父に会いたいかどうか聞いてくれましたよね。でも、僕は会わなかった。」
「うん。実はあの時、君のお父さんは養育費の未払いを蒸し返されたくなかったらしくて、向こうも君と会うつもりはない、ということだったんだけど…うちの事務所に三月末に来て、君の消息を聞いてきたそうだ。」
「何を急に…。」
「それで、大変申し訳ないんだが…その時に僕が不在だったせいで事務員の女性が対応したんだけど、うっかり『パリからは帰ってきているけれども、あとは知らない』と答えてしまったそうなんだ。僕たちには守秘義務があって、それは依頼人の家族に対しても当てはまるんだが…本当にすまない。」
「いえ、それくらい構いませんよ。東京のどこに住んでいる、とか、どんな仕事をしている、とか、そういう具体的な話は何もしてないんですよね?」
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