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しばらく歩いていると、バックパックと小ぶりのクーラーボックスを担いだ力弥が歩いてくるのが見えた。繁はスマホに目を落としながら、力弥が近づいてくるのを待つ。
「あっ、すみません!」
「はい?」
「ちょっと道に迷ってしまって…あれ?もしかして、立川君?」
「…あ、はい。そうですが…。」
「俺、黒川。覚えてないかな?パリで一緒に飯食べたの?」
「え?え…?っと、うーん。あの、人違いではないでしょうか?」
「ううん?日本人同士でちょっと集まって、パリで飯食いに行ったじゃん!」こんな話、でっち上げだ。どうせ日本人は海外で何かとつるむから、こいつも日本人のグループで飯食いに行ったりしているだろう、と適当に当たりをつけたのだ。
「え?いや…うーん。ああ、あの料理学校に入ったばっかりの頃か…もう八年かな?それくらい前のことですけど…。」
「そう、そう!さすがにそんな昔のこと、よく覚えてないよね。」
「すみません。みんなが卒業後、どこに就職したかも知らなくって。」
「いいよ、いいよ。立川君、あんまり日本人とつるまなかったもんね。」
「ええ、まあ…」まだどこか警戒しているように見える力弥に、繁は畳み掛けるようにカフェで休もうと誘った。
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