逢う魔時

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(うわ、しょぼ…) 駅から歩くこと十数分、という距離にある団地群。力弥が途中のアーケードで魚屋や酒屋に立ち寄っていたため、実際は二十分以上かかっており、普段歩く機会の少ない繁の足はすでに棒になっていた。築数十年は経っていそうな、グレーともベージュともつかない画一的な建物が立ち並ぶそこを、力弥は迷いなく進んでいく。 (力弥はこんなところに住んでちゃいけない。きれいなお人形には、それにふさわしい家が必要だな。) 疲れた足を引きずりながら、力弥と一緒に住む家をぼんやりと妄想しているうちに、力弥が建物の角を曲がる。 (おっと。…誰だ、あいつ?) 少し歩調を速めて角を曲がろうとしたところで、男の切羽詰まった声が聞こえてきた。 「力弥!力弥だね?…父さんだよ。」 その瞬間、力弥がびくりと体を震わせる。 「…人違いではないですか?僕に父はいませんが。」 「っ!力弥。君は立川力弥だろう。やっと、探し当てたんだよ。どれだけ大変だったか…少しだけでいい、俺の話を聞いてくれよ。やっと会えたんだから。なあ、親子じゃないか!」 「あまり大声を出さないでください。近所迷惑でしょう。それに、あなたと話すことは何もありません。…その手を放してください。」
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