「愛してるよ」

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生きてる実感は死ぬときにしかわからないものだと、この時始めて実感した。 「殺して」 真っ黒は銃口の切っ先を向けられたとき、ただそう嘯くことしかできなかった。 世界が終わればいいのに、とかみんな死んでしまえばいいのに、とか中学、高校と思わない日はなかった。ーー生きていてそう思わない日はなかった。 夢も希望もなく、生きているのがしんどかっただけで、自分から死のうなんてそんな度胸あるはずもなく、だから世界の終わりを望んだ。 やりたいこともやるべきこともあったはずなのに、それに生きる意味を見出せなかったのは自分自身だ。 「ーーさん、私も殺して」 愛しいはずの彼を見据えて、もう一度訴える。 「殺して」 彼は銃口を向けたまま動かない。 優しい雰囲気の彼から感じられたことのないほど、重苦しい空気を纏っていた。 いつもとは対照的な彼の表情は悲しそうで、寂しそうだった。 でも何も思わない。 何も思ってはいけない。 愛しい人に殺される自分は彼の気持ちを踏みにじるだけだ。 彼を殺人者にしてしまう、とかそんなこれっぽちの偽善も彼を苦しめてしまう。 「殺してほしい、の...」 か細く、今にも消えてしまいそうな小さな声は彼に届いただろうか。 その声に重なるように彼の視線が揺れ、何か言いたげに口を薄く開けて息を吸った。 ひゅー、と風邪を切るような音が微かにしただけだった。
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