0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
生きてる実感は死ぬときにしかわからないものだと、この時始めて実感した。
「殺して」
真っ黒は銃口の切っ先を向けられたとき、ただそう嘯くことしかできなかった。
世界が終わればいいのに、とかみんな死んでしまえばいいのに、とか中学、高校と思わない日はなかった。ーー生きていてそう思わない日はなかった。
夢も希望もなく、生きているのがしんどかっただけで、自分から死のうなんてそんな度胸あるはずもなく、だから世界の終わりを望んだ。
やりたいこともやるべきこともあったはずなのに、それに生きる意味を見出せなかったのは自分自身だ。
「ーーさん、私も殺して」
愛しいはずの彼を見据えて、もう一度訴える。
「殺して」
彼は銃口を向けたまま動かない。
優しい雰囲気の彼から感じられたことのないほど、重苦しい空気を纏っていた。
いつもとは対照的な彼の表情は悲しそうで、寂しそうだった。
でも何も思わない。
何も思ってはいけない。
愛しい人に殺される自分は彼の気持ちを踏みにじるだけだ。
彼を殺人者にしてしまう、とかそんなこれっぽちの偽善も彼を苦しめてしまう。
「殺してほしい、の...」
か細く、今にも消えてしまいそうな小さな声は彼に届いただろうか。
その声に重なるように彼の視線が揺れ、何か言いたげに口を薄く開けて息を吸った。
ひゅー、と風邪を切るような音が微かにしただけだった。
最初のコメントを投稿しよう!