入学式

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入学式

ゴトゴトゴトと揺れる馬車から頬杖をつきながら外を眺めていた。 「ルゥ、そんな落ち込まなくたっていいじゃーん」 「いや、俺は一般市民なんだよね。ここでフェイと降りたら『えっ!?どんな関係!?』ってなるに決まってるんだよね。」 「ルゥは恥ずかしがり屋だね〜」ニッコリ 「恥ずかしいんじゃなくて目立ちたくないんだよ。フェイと居たら騒がしくて仕方ない。」 「ふふ、ツンデレさんめ。」 「何言っても効かねぇなどんなメンタルだよ。」 「枢機卿メンタル。」 「強すぎるだろやめろ。」 仲良く話しているのはフェイラン=ルール=ヴィシュタリア。 そう、誰も彼には頭を垂れて上げられない西部教会の枢機卿、ヴィシュタリア卿だ。 何故この要人がこの学園に通う事になったのか今でも本当に分からない。 教皇に許されるとか前世でどんな善行を積んだのかと首を傾げるほどだ。 何故なら教会はこれまでずっと信者は内々で教育し、立派に育ててきたから。 本当に意味分からない。 「ルゥ、そういう髪も好きだけど、やっぱりいつもの髪が好きだなぁ...。」 と僕の髪を優しく撫でる。 「あの髪色では学校ではやっていけないよ。もしあの家とぶつかりでもしたら大変どころでは済まない。」 ぷいっと手を払うようにそっぽを向く。 「どうしてもダメなんだ。」 「ダメだね。」 「……じゃああの僕の大好きな瞳も?」 グイッとネクタイを引っ張られ、両頬を美しい手が包む。 息のかかる距離、高鳴る鼓動、じっと見つめる碧い目は僕の目を離さぬよう掴まれている感じがした。 「……フェイ、離して。」 「やだ。」 「……フェイ。」 「やだ。」 「フェイ、ネクタイ伸びる。」 「やだ。」 「もう着くよ。」 「だって着いたらクラス違うし、今だけだから。」 「じゃあもっと違う方法で。」 「……分かった。」 ふわっといい匂いが鼻をついた。 彼の暖かい温もりが自分の身体を包む。 だが彼の身体は寂しそうな感じがしたので、それを安心させるようにトントンと彼の背を子供をあやすように優しく叩く。 「大丈夫、僕は傍にいなくてもずっと貴方を護ってる。それが僕の使命であり、僕の人生、そして僕の運命だから。そんな寂しがらないで。」
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