3人が本棚に入れています
本棚に追加
群衆を横目に列へ並び直し、思いの外早く列が進む。
さすがは貴族様が大勢通う名門校、敷居と民度が高い。
「お名前お伺いします。」
「レイル=アルスタンです。」
「……はい、確認しました。クラスはBです。会場へは係りの者がご案内します。どうぞ左へ。」
便利な魔導具があるもので、水晶に顔を映せばその水晶に読み込まれた情報を元に欲しい情報を引き出せるという画期的な魔導具。
わざわざ紙を捲って探さなくてもよいとは、首都の学校は進んでいる。
綺麗に整備された校舎はこの国の文明の高さを表す。
学校の整備は二の次三の次となりやすい。
大抵の小国は最優先で軍事、次に観光や商業、そして医療や教育といった順で国が回るが、大抵軍事に偏りやすく、王族貴族に資産が貯まりやすい。
対して帝国では軍事はそこまで最優先でなく、医療や教育がかなり高い優先度で回されている事が伺える。
保育園から高等学校、専修高等教育施設、果ては専修大学院まで全て国立で運営されており、あらゆるどんな階級の人間も帝国民ならば全て無料の元管理されている。
あらゆる分野の学問が高等教育まで学ぶ事ができるのは帝国だけだ。
そしてここまで最新技術が組み込められるのも『全能』の名を持つ皇帝が柔軟に対応したからだ。
職員に案内されるままに歩を進める。
着いたのは大きな趣のある講堂。
「特別席以外は自由に着席してもかまいません。特別席はSクラスのみ着席を許可早れているので、
決して着席しないでください。それでは失礼します。」
平民にも丁寧に頭を下げる職員には本当に感服する。
こんな大勢の人がいるのは久しぶりだ。
講堂に入り、席はどこにしようかと辺りを見渡す。
少し上を見上げれば椅子が他より豪華な席が見え、そこが特別席になっているよう。
入り口に1番近い通路側に座り、時間潰しのために鞄から本を取り出す。
しばらく本を読み耽っていると、だんだん講堂が騒がしくなってきた。
基本的にエスカレーター形式なので皆知り合いではあるから、少し自分が浮くのも仕方ないことだ。
「ここ、隣いい?」
驚いて顔を上げると明るいオレンジの髪の青年が隣を指さしている。
特に拒否する理由はないので頷いてまた文字に目を落とす。
「何読んでんのー?」
いつのまにか隣に来たオレンジ頭に話しかけられる。
「その前に名乗るのが先じゃない?」
「え、うわっ、ほんとだ!名乗ってねぇや!俺タリヤ=ローレン!お前は?」
「お前って言うな。レイル=アルスタンだ。失礼な奴。」
「お貴族様じゃねぇんだからいいじゃん!」
「礼儀は貴族でも平民でも関係ないぞ。」
「かたっくるしー」
「うるさ。」
「やっぱ眼鏡はみんな堅苦しいのかー?」
「一部の人間によって生まれる偏見は信用ならない。」
「じゃあレイルが全ての責任を負うということで。」
「責任重すぎるだろ。」
やいやいと隣からお調子者がちょっかいかけてくるので読書はやめた。
最初のコメントを投稿しよう!