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たぶんこれが、
成功した人間の傲りというものだろうか。
気持ち悪い物を見てしまった気分になり、
早々にこの場を立ち去ろうと思ったのに、
なぜか行く先を前田くんに遮られる。
「ふうん、結婚式の帰りかい?
実は俺、待ち合わせの相手が2時間ほど
遅れるという連絡を受けてさ。
暫く話し相手になってくれないかな?」
「悪いんだけど私、急ぐから…」
躱そうとしたが
大きな荷物のせいで機敏に動けず、
手首をギュッと掴まれた。
「じゃあさ、コレ持ってあげるよ。
いいじゃないか、久々に会ったんだし。
2時間が無理なら1時間でもいいからさ」
「でも、私、本当に帰らないと…。
家で主人が待っているから」
てっきり私が誰と結婚したのかを、
この人は知らないんだろうと思ったのに。
ムリヤリ私の手から荷物を奪い、
片頬を上げる笑い方で前田くんは言う。
「知ってるよ、西原と結婚したんだろ?
同窓会で再会した後、
アイツが口説いたんだってな」
「…え?ああ、まあ…」
どうやら私の意思は完全無視らしく。
前田くんはエレベーターの方へと向かい、
上ボタンを押しながら尚も話し続ける。
「随分と手堅い男を選んだもんだなあ。
西原なんて面白くもなんとも無いだろ?
あの時、俺と別れなければ良かったのに」
「…え?」
なんだ?口説いているつもりなのか??
いやいやだってアンタも私も既婚者だし。
そう思ってふとその左手を見ると、
有るべきはずのモノが無い。
「あれ?指輪は?」
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