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「あはっ、見つかっちゃったか。
…そう、普段は外しているんだ。
指輪してるとモテないだろう?」
「へえ、…そうなんだ」
結婚しているのに、まだモテたいんだ?
モテていったいどうするつもりなの?
せっかく森嶋くんと唯ちゃんの結婚式で
ホッコリしていたのに。
コイツのせいで気分が台無し。
荷物を奪い返して逃げなくてはと思うが、
なかなかタイミングが掴めず。
半ば強引にエレベーターに押し込まれ、
気付けば夜景が美しいバーラウンジに。
「前田さま、いらっしゃいませ」
「ああ、いつもの個室で頼む」
どうやら常連らしく、
流れるようにその個室へと案内される。
「まあまあ、そんなに慌てないで。
ほんの少しの間だけでいいからさ、
そこに座って俺の相手をしてくれよ」
「だっ、本当に私、帰りたいんだってば」
声を荒げたその時、オーダーを訊きに
ベテラン風のバトラーがやって来て。
仕方なく私は自分に近い丸椅子に座った。
「ご注文はいかが致しますか?」
「ああ、僕はいつもので。
彼女には…何か飲みたいものはあるか?」
「えと、じゃあ、ペリエで」
酒を飲めと言われるかと思ったが、
案外すんなりとソレは許されて。
そして2人きりになった途端、
前田くんはベラベラと喋り出すのだ。
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