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黒魔術
ヴィレッジシンガーズのヒット曲を島谷ひとみがカバーしたアレがバーのオーディオから流れてくる。
何て曲だったっけ?
伊勢佐木町にあるhitomiってバーだ。
「また飲んでるのか?」
本田がやって来た。
「飲んじゃ悪いんですか?」
僕は言った。
「君の体を心配してるんじゃないか?」
「そりゃあどうも」
「これやるよ」
ラッピングされた箱を渡された。
包装を剥がした。箱を開けた。
マトリョーシカが現れた。
ドキドキした。変なプレゼントだ。
「これを食いなよ」
マトリョーシカが喋りだした。
巨大・大・中・小・極小の5つに分かれた。マトリョーシカの中にコーンスープが入ってた。
「まさかポッカじゃねぇだろうな?腹痛くなったら仕事出来ねぇんだからな?」
「そんな粗悪品僕が作ると思うか?」
「可哀想に、伊奈ちゃんからだぞ?」
伊奈薫は新人の女刑事だ。
「マジっすか?それなら飲んでやるか」
ゴクッゴクッゴクッ………うまい!
翌朝、僕は美冬市にあるスキー場に来ていた。ゴンドラの窓に顔を近づけゲレンデを見下ろした。
薫はカラフルなウェアに身を包んでいた。「リキは使えるようになったか?」薫に尋ねた。
僕たちは黒魔術を使うことが出来る。
リキはあらゆる天才を呼ぶことが出来る。
「まだ」
「じゃあ、ジンは?」
ジンは宝物を察知する魔法だ。
「あぁ、それなら出来るようになった」
薫がジンを使った。
管理事務所に《剣》があるようだ。
僕は帽子をかぶりゴーグルをした。
ゴンドラがそろそろ頂上に到着する。
「ヒャー寒いなぁ?」
薫の顔が歪んだ。
「そりゃあ寒いさ?冬だからね?」
そういう僕も口元が曲がっていることに気づく。
「Xmasだってのに、何で木崎なんかと一緒にいないといけないの?」
「モンスターを今年中に倒さないと僕たちクビになるんだよ?」
薫のスキーの腕前は僕なんか足元にも及ばない。
薫が窺うような顔つきをした。
「『私をスキーに連れてって』、ちゃんと見たのよね?」
原田知世と三上博史主演のラブストーリーだ。僕が生まれるずっと前に流行った映画だ。ユーミンの主題歌もステキだ。あの映画が教材として使われた。
「知世ちゃんの顔ばかり見てました?」なんて言ったらぶん殴られるかな?
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