定まらない心

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  何故、この世界に人間は生きているのだろう。俺はそれが不思議で仕方無い。 「何をぼーっとしてるの? 先生、もう来てるよ」 「ん、ああ」 隣の席の子に小突かれ、俺は、はっと我に返った。たまに、思考があらぬ方向に飛んでしまうのは、治したい癖である。 「初めての世界史、楽しみだな」 「そうだな」 俺たちのわくわく感を後押しするかのように、チャイムが鳴った。 「おーし、じゃ、始めるか」 「起立、例。プルート・プレセダン様に礼。着席」 世界史の担当は男の先生だ。たしか、隣のクラスの担任だったような気がする。昔、なにかのスポーツでもしていたのだろうか、良い体格をしている。 「今年、世界史を担当することになった、藤平透耶だ。よろしく」 ここで、他の教科であれば、皆で質問責めをして、授業を一時間潰そうとするところだが……。 「先生、自己紹介は適当で良いので、早く授業を始めてください」 誰かがそう言った。 「ははっ、そんなに魔法界のことを知りたいか。まあ、先生も昔はそうだったから、気持ちはわかるけどな。じゃ、まず質問。この人間界と魔法界の決定的な違いは分っているな?」 クラスの全員が頷く。俺たちの住む人間界は化学の発達によって繁栄し、魔法界は魔法によって繁栄してきた。これは、小学校・中学校を通して何度も教え込まれてきたことだ。 「魔法界ができてから、二千年余り。人間界と魔法界はお互いに関わることなく、それぞれの文化で繁栄してきた。魔法界は人間界の存在を知っており、密かに人間界で生活する魔法使いもいたようだ。でも、魔法界の存在を知る人間はいなかった」 カツカツと黒板に書き始める藤平先生。思ったよりも旧だったため、慌ててノートを開く。 「そして、魔法歴千七百五十年にメルクリウスと言う魔法使いが、人間界に魔法界への扉を作った」 メルクリウスは偉大なお方だ。小さい頃から、なんども聞いた名である。
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