定まらない心

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「この最初の扉が作られた場所はどこか知っている人はいるかな?」 何人かが手を挙げた。俺は、魔法や魔法界への憧れはあるものの、そこまでのマニアと言う訳でもない。何かで聞いたことがあるような気もするけど、何だったかな、というレベルだ。 「じゃ、石崎さん」 「日本の、伏木村です」 「正解。扉が作られるまでは地図に載ってすらいなかった、小さな村だ。でも、色々不思議な村だったそうだよ。髪の地毛が紫とかピンク色の人がいたみたいだ」 そうだ、伏木村だ。髪の毛の色が普通の色ではなかったのも、地場が魔法界に近かったことが影響しているのだろうか。魔法使いの中には、人間からしたら突飛な色をしている人が少なくない。 「その伏木村よりも不思議なのは、魔法使いの起源が人間にあるとされていることだ。教科書二十七ページを開いてくれ。そこに載っている肖像画はプルート・プレセダン。中庭の銅像のお方だ。真偽は分らないが、この方は人間だったとされている。童話の『アリアの昔話』を読んだことがある人は知っているな。」 懐かしいな。『アリアの昔話』で文字を覚えたと言っても過言ではない。始めの頃は、親に「読んで」と、よくせがんでいたっけ。読むたびに、魔法界への興味と憧れが増していったものだ。 「また、三十年前には、高校生が一日で三人も跡形なく消えた事件があったと記録されている。大昔だったら神隠しで終わっていたかもしれないが、魔法界に転移したのではないかというのが、この時代での有力な説だ」
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