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「そう思うだろ? くだらない。そっちが危害を加えなけりゃ、オレは大人しくしてるってのに……」
先日の看守の毒殺未遂を揶揄りながら、鉄格子を鼻で笑う。その裏に見えるのは、鉄格子など何の役にも立たないという自信だった。
「オレが逃げる気なら、とっくに姿を消してるさ」
「そうだろうな」
同意して頷くコウキへ、興味深そうにロビンは目を瞬かせて身を乗り出す。
「続きか? オレに資料の訂正箇所を聞いたんだっけ」
「母親の殺害動機まで聞いた」
「なるほど……」
思い出すフリをしているが、彼のIQなら忘れる筈がない。その天才的な頭脳で不可能犯罪を起こし、世界をパニックに追い込んだ男なのだから。
「あちこち間違いだらけだったが……大きく違ってるのは、オレの好みの分析と罪状だ」
すでに暗記した資料を脳裏で捲る。
彼の好み……ターゲットの選出について『美人』と書かれていた。老若男女の区別なく見た目の美しい人間を切り裂いて、キレイに解体した彼の行為から『ビューティー・キラー』と呼ばれた時期もあった。
一流外科医のような切り口で、丁寧に腑分けされた死体。
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