02.殺害動機

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 数分前まで談笑していた友人に忘れ物を届けに戻った女性は、路地で無残に解体された友人を目の当たりにした。その際、温かな臓腑からは湯気が立ち上り、まだ動いているものまであったという。 「美人好みではないと?」 「いや、正確には気の強い美人が好きなんだ。アンタみたいな…」  名ではなく獲物として『アンタ』と呼びかけたロビンに、コウキは完全に無表情で応じる。乗り出していた身を、つまらなそうにベッドに戻したロビンが、組んだ足の上に肘をついて顎を乗せた。 「罪状が違う……とは?」  彼が飽きてしまえば、もう問答は終了だ。不満そうな仕草を前に、それでもコウキは続けた。  彼が答えないなら、次の機会を待つだけのこと。別に急いでいる訳ではない。 「快楽殺人ってトコ」  自らの快楽を満たす為に行われた殺人ではないと、彼は断言した。今までのロビンの供述調書には残されていない、新たな言葉にコウキが目を見開く。  ロビンの『管理人』となった過去の学者は8人――2人が彼に殺され、4人が精神障害で入院し、残る2人も自殺した。8人が誰も聞き出せなかった話を始めるロビンは、三つ編みを編み直している。 「ならば、殺害動機が存在すると?」  編み終えた髪をゴムで止めて、ぽんと背に放る。彼は友人に学校の話をするような気軽さで、口を開いた。 「さてね。そこまでは教えてやらない」     
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