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05.道しるべ
手にした銀色の鍵は、何も手がかりのない物だった。
ロッカーの鍵にしては古めかしいデザインで、摘み部分がクローバーのような形をしている。見た目は古く感じるのに、材質の銀に硫化は見られなかった。
その事実から、最近作られたものだと推測できる。
ヒントになりそうな刻印などは見当たらず、コウキは溜め息をついた。
どこに使われる鍵で、どんな意味を持つのか。まったく見当がつかない。
癪に触るが、素直にロビンに尋ねた方がいいかも知れないな……そう思って鍵を机に放り出せば、チャリンと金属の触れ合う音がした。
視線の先には、先ほどの鍵とネクタイピン――砒素毒で濁った色を晒すピンを見るうちに、ふと気づいた。ネクタイピンを寄越したのはロビンで、鍵を渡したのも彼だ。
「銀……」
ロビンは何と言った?
『秘密は危険だから、気をつけてな』
甦った言葉を噛み砕く。危険な方法でしか秘密には近づけない。その危険が、砒素を指しているとしたら? あの男と俺の接点は、先日の『毒殺未遂』くらいだ。
砒素を手がかりに、秘密へ近づける可能性があった。
慌てて立ち上がると、客員教授の籍を置く大学へ向かう。
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