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02.殺害動機
持ち帰った銀のネクタイピンを変色させていたのは、砒素毒だった。
無味無臭の砒素を飲み物に混ぜてロビンへ出し、逆に返り討ちにあったのだろう。調査報告を要求すれば、すぐに書面にて届けられた。
苦しんでいた看守は、ロビンに妹を殺された被害者遺族だったらしい。復讐の為に名と戸籍を誤魔化し、特殊刑務所へ入り込んだ。
ロビンがどういった手法で彼に飲ませたのか、コウキが興味を持ったのはその部分だった。
看守への同情は欠片もない。
人を殺そうとするなら、殺される覚悟をもって望むのが最低限の礼儀だ。そう考えるコウキにとって、冷めた目で看守を見つめていたロビンの態度こそ当然だった。
再び足を運んだ監獄は、鉄格子が二重になっている。
「先日は失礼した。歓迎するよ、Dr.」
にこやかに応じる彼は、手が届かない距離に設置されたもう1枚の鉄格子など気に留めていなかった。
「随分と厳重だな」
呟いたコウキの声を聞き咎め、ロビンはベッドの端に腰掛けると行儀悪く足を組んだ。二重の鉄格子の向こうで椅子に座るコウキを待って、大げさなジェスチャーで愚かな行為を嘲笑う。
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