スライム

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プルプルと体を振って答えます。 「てっきり、俺の事を美味しく頂くのかと思ってたから、驚いたよ」 笑いながら人間は本当にありそうな事を言い出しました。でも私は人間なんて食べません。食べるのは草ばかりです。 「俺さ、皆が魔物に困ってるって言われて、放っておけなくて、それで旅に出たんだけど、出たばっかりでさ」 何にも分からないんだ、と人間は言います。だからこの森の事を知らなかったという事でしょう。 「君みたいな魔物もいて良かった。本当にありがとう。さて、俺はそろそろもう一度旅に出るとするよ」 人間は私にそう言って、また頭を撫でました。 「どうしたの?」 私は人間の着ている服というものを端を、手で引っ張りました。そうすると人間は私に問い掛けて来ます。 そこら辺に落ちている木の葉と枝を手に取り、そこに人間の使う文字を書きました。それを人間に見せました。 「ん?この森について教える、って良いの?そんな事して」 うんうん、と体を前に傾けて答えました。 「そっか、何から何までありがとう。えと、君には名前はあるの?」 なまえ、と言われて少し考えました。私にはスライムという名前の他にそんなものは無かったからです。 しかしずっと前、村に降りた事がありました。その時、物陰の隠れて人間を見つめて、観察して話を聞いている時に名前を呼ばれていた人間はとても嬉しそうでした。
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