スライム

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でもそれは私の事ではありません。 村に降りて、カークさんの様子を見に行ったら、カクさんがその名前を呼んでいました。 私が物陰に隠れながら見ているカークさんは目の前でその名前を呼んでいたので私ではない事は確かです。 バカな話だという事でしょう。モンスターの私が人間に覚えてもらおうなど、人間に想いを寄せるなんて、あってはならない事なのでしょう。 カークさんは人間なんです。だから人間は人間同士で想いを寄せ合い、一緒になるのが正しいんです。 私には人間と同じスタートラインにすら立つ資格すら無いんです。 そんな事、ずっと前から分かっていました。 昔から人間に憧れて生きて来ました。それぐらい分かります。 「……さようなら」 喋れない訳じゃないんです。人間の言葉だって理解出来ます。でも私は人間ではありません。 そういう事です。 ズズズ、と来た道を引き返して自分の住み家に帰る事にしました。 「メオ!」 後ろでまた名前を呼ぶ声が聞こえました。 勿論それは私の名前ではありません。私に名前なんてありませんから。 「……スライムさん!」 でもその名前に振り返ってしまいました。この村に今いるスライムは私だけのはずだと思ったからです。 振り向いた先には、あの人間がいました。
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