チートな世界の片隅で

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平穏な青空が広がるその下に、高山植物が咲き乱れる監獄島の山頂に展望台がある。 展望台から見えるミフィア湖からは潮の薫りが風に流されていた。 この世界を人々はスピリットと呼んでいる。 監獄島の西と東には囚人を収容する監獄が置かれている。 監獄島はミフィア湖の中心に浮かんでおり、展望台からはラッドサンド大陸が見える。 監獄島とラッドサンド大陸を結ぶのは五十人乗りの船で、時間にして三十分掛かる。船の本数は少なく、天候災害が起きるとすぐに欠航する。文句を言っても仕方がない。船の構造技術はまだ未熟だった。機械の発達は種術(トリック)と共にある。 スピリットには種術(トリック)を操る人間が住んでいる。種術とは三万年前の魔法のことだ。 三万年前に政府と神官が分離したときに政府の博士が付け焼き刃でつけた名前であった。 今日、政府は神官を北と西に追いやって政権を握っている。その核となる監獄島には種機掲示板素子(イリス)補助掲示板素子(ワルツ)とハクアが設置されていた。 イリスは個人識別番号の管理や資金の管理、歴史の貯蔵庫としての役割をもっている。他にも細々とした決定権を担っており、世界には欠かすことのできない存在として設置されている  ただ、イリスはバグを起こしやすく、一度保存した情報を直すことに時間が掛かることで有名で、個人識別番号を登録し間違えると直すことに莫大な費用を使うこととなる。その悲惨な実態をなんとかするのが管理者のユーリ・シトラスだった。一度、バグが起きると彼は寝食を忘れてイリスに付き添う。それでもバグが直らずに、種力が暴れだし、監獄島は度々沈みかけそうになる。
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