チートな世界の片隅で

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資料は囚人の経歴や罪歴を纏めたものである。監獄島の監獄に送られた囚人たちの記録とこれから拘留されてくる囚人の情報を警隊で把握し、内容をイリスへと送るのである。 「これ以上は無理ですよ。スピカ副」 根を上げたのは会計長のアクスであった。ヒル老人の隣で資料を掲示板素子(パソコン)に打ち込んで項垂れている。 監獄が満杯になる前に囚人の処刑が実行されるため、資料整理は毎日行われる。その承認印を持っている隊長は今日も行方不明であった。 「明日も明後日も終わりませんよ。僕も疲れてしまいました」 スピカは盛大に溜め息を吐いた。 「隊長はどこへいったんだ」 アクスは髪をむしった。 「僕はこれから第三警隊に出向かなければなりません」 時間を確かめたスピカが立ち上がる。椅子に掛けていた上着を羽織ると資料を重ねた。 「今朝の事件ですかな?」 「ええ、神官の娘さんが迷い込んだみたいです。神様を出せと暴れたそうで。ちょっといってきます」 「それより隊長ですよ!」 アクスが叫んだがスピカは聞きもせず仕事場を出て馬車にのった。 本来、神官の人間が政府領域に姿を見せることはない。危険をおかしてまで迷い込んだと言うことはそれなりの事情があるとスピカは見ている。 馬車は船着き場を突っ切って、繁華街を抜ける。工場地区の近くにある施設が第三警隊だ。第三警隊は主に密告者や暗殺者などを取り締まる部隊であった。神様が存在する島だけに神様を暗殺、調査に来る輩が多いのである。
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